●ヒラリー・クリントンの危険な主張
アメリカの“右翼の陰謀団”が、夫を失脚に追い込むかもしれない不倫および偽証スキャンダルの背後にいるという、ヒラリー・クリントンの主張は大きな失敗だった。このスキャンダルを煽り立て、これによってクリントンは破滅するかもしれないと言っているのは、ワシントン・ポストとニューズ・ウィークを先頭に、ニューヨーク・タイムズやタイム、およびメジャーなネットワークなどの主要メディアだ。
ニューズ・ウィーク誌は、クリントンの長年の親友であるジョージ・ステファノプロスにクリントンの「背信行為」について原稿を依頼した。ステファノプロスはABCニュースの解説者であり、辞任と弾劾の可能性を引き出すために放送を始めた。
そして、誰もこれらの主流のメディアの声を“右翼”――少なくともアメリカの“右翼”――の意見だと非難したことはない。
しかし、ヒラリー・クリントンは“右翼の陰謀団”が“モニカ・ゲート”スキャンダルを煽り立てていると主張したとき、何か手がかりをつかんだのかもしれない。
深く掘り下げてみれば、ずっとさかのぼってイスラエルの強硬な“右翼”に至り、そこから戻ってワシントンDCの“モニカ・ゲート”に至る関係がわかるだろう。
●背後にちらつくユダヤの影
イスラエルの右翼、リクードのアメリカの後援者たちが、クリントン大統領に対し辛辣な広告キャンペーンを開始したのと同じくして、アメリカの正統的なメディアが先頭を切って、またもクリントンの「大胆な性的遊戯」について突然騒ぎ立て始めたのは、偶然ではないかもしれない。
様々な噂が飛び交っているこの狂気のまっただ中に消え去った、基本的な事実を見てみよう。
メディアは、元ホワイトハウスのスタッフであるリンダ・トリップと、彼女のやかましいニューヨークの友人ルシアン・ゴールドバーグを“モニカ・ゲート”の主要な扇動者として注目してきた。
しかし、「ポーラ・ジョーンズの弁護士は、ルウィンスキーが大統領と性的関係を持ったかもしれないという匿名の内密な情報を、まずいくつか入手した」と、ワシントン・ポストは指摘した。
ポーラ・ジョーンズの弁護士がルウィンスキーに連絡を取ったのは、明らかにこの後である。大統領に、モニカとの関係は暴露されたと、そっと知らせたのだ。
この際、トリップ夫人とゴールドバーグ夫人には、クリントン=ルウィンスキー騒ぎで他に活用できる利害関係があるので、彼女らが「匿名」の情報提供者ではなさそうだ。事実、トリップ夫人は直接、独立検察官であるケネス・スターの所へ行ったのである。
●ウィリアム・クリストルという存在
最初の疑問は、誰がポーラ・ジョーンズの弁護士に、大統領とモニカ・ルウィンスキーとの関係に「明白な証拠」があると密告したかだ。
モニカは少なくとも最近まではクリントン支持者であったようだし、弁護士に話を漏らしたのは絶対彼女ではない。だから、大統領の側近グループに近い、もしくはスパイをしている誰かが、モニカと大統領の関係をジョーンズの弁護士に密告したということになる。
ゴア副大統領を大統領にさせたがっている、アル・ゴア陣営の誰かがやったのだろうか。
しかし、さらによく考えてみよう。ニューズ・ウィークのマイケル・イシコフが、この話を初めて公に“追求”した最初のジャーナリストだった。そして、このニューズ・ウィーク誌は、ワシントン・ポストをも所有するメイヤー・グラハム帝国によって出版されているのだ。
ポスト誌によると、一般的には“保守的なウィークリー・スタンダード誌の編集者”といわれている、ウィリアム・クリストルが、このスキャンダルを最初に“公表”した一人だということだ。
この話を“最初に”公表した一人としてクリストルの役割は、全体像を理解する上で非常に重要だ。
クリストルは、億万長者のメディア王であるルパート・マードック氏――イスラエルの強硬派リクードの主要な協力者――の表看板だけであるばかりではなく、ジャーナリストのアーヴィング・クリストルと歴史家ガートルード・ヒンメルファーブの息子である。
クリストルとヒンメルファーブは二人とも、イスラエルの“反共産主義右翼”と長年にわたり親密な関係を持つ、“新保守派”の人物として現れた自称“元マルクス主義者”である。
クリストルは、彼の両親と同様リクード派で、イスラエルに背を向けたクリントンの決定を厳しく非難してきた。
また、特記すべき事としては、クリストルはクリントンと同様、ロックフェラー家とロスチャイルド家に支配された高級エリート外交政策実力者会議のビルダーバーグ・グループに入会していた。クリストルはビルダーバーグの“共和党”派と見なされている。
そして1月26日、ちょうどルウィンスキーとのスキャンダルがエスカレートしクリントンを巻き込み出したとき、クリストルはクリントンに手紙を出して、イスラエルの憎むべき敵であるイラクに軍事攻撃を始めるよう大統領に圧力をかけたのである。
クリストルと共に手紙に署名したのは、ニュート・ギングリッチ下院議員の長年の親密な協力者である元共和党員のヴァン・ウィーバーや、悪名高きイスラエルのスパイで元国防長官代理で、現在イスラエル武器業界の高級コンサルタントのリチャード・パールら、一群のイスラエル“右翼”の有名なアメリカ人支配者たちである。
クリストルとマードックの関係を考えると、マードックのFOXテレビが、実際にメディアの中で最初に行動を起こし、他のネットワークを競合させたのは興味深い。
FOXニュース・チャンネルは、ほとんど24時間ぶっ続けで、この話を放送した。たとえ、他のニュースが放送されていたとしても、どんなに平凡なことでもクリントン・スキャンダルに進展があったら中断して放送した。
この急に大騒ぎになったスキャンダルの最もけばけばしい話が、ニューヨーク・ポストやマードック氏の所有する他の時事出版物で報道されたのは、驚きでも何でもないのである。
●ほくそ笑むネタニヤフ首相
再度“夫を援助する”に当たり、ヒラリー・クリントンはテレビ伝道者のジェリー・ファーウェルと彼の友人のジェシー・ヘルムズ上院議員を、大統領をやっつけようとしている“右翼の陰謀団”の一味だとして告発した。
ヒラリーは、ファーウェルもヘルムズも、またもや、イスラエルの強硬な右翼のリクード陣営と非常に近しいということには言及しなかった。二人とも、クリントン大統領が平和交渉の相手としてはずっとやりやすい、リクードのライバルであるイスラエル労働党を支持したことに断固として反対したのだ。
クリントンは現在、リクード過激派連合に政権をもたらしたイスラエルの選挙で、ネタニヤフがシモン・ペレス率いる労働党を破って勝利したとき、政治的に困惑した。労働党は平和を提唱するが、ネタニヤフは絶対に妥協しないからだ。
イスラエル首相ネタニヤフは、クリントン大統領と正式に会見する前に、クリントンの最もうるさい批判者の一人であるファーウェルと会っていた。そして、ファーウェルとリクード親派の集会に姿を現したのだ。
ワシントン・ポストでさえ、1月22日にネタニヤフの上級役人が、「イスラエルのリーダーは、ホワイトハウスからの反抗に対し、アメリカの政界での“彼ら自身の武器”、つまり、ファーウェルや従順なシオニスト親派の“キリスト教右派”を使って応じる準備ができている」と言ったことを暴露したのである。
1月24日のポスト誌によると、イスラエルでは、「報道関係者はクリントンの不倫騒ぎを真に受けた。非常に興味深い。なぜならモニカ・ルウィンスキーはユダヤ人だからだ」と言っているとのことである。
イスラエルの日刊紙で、ナフム・バーニアは皮肉を込めて次のように書いた。
「和平プロセスの運命は、プラハ生まれのマデリン・オルブライトというユダヤ女にかかっていると無邪気に考えていた。ところが、明らかに、平和交渉の運命は、ビバリーヒルズ出身で、3年前に実習生として、ホワイトハウスでとても楽しい夏を過ごした、24歳のモニカ・ルウィンスキーという、もう一人のユダヤ娘にかかっているのである。」
バーニアのコメントがニューズ・ウィークの2月2日号で伝えられるまで、それはスキャンダルに特別な問題を喚起したが、ニューズ・ウィークはバーニアの言葉を慎重に編集して「和平プロセスの運命は他の女性にかかっている」と変えたのである。
事実、ルウィンスキー・スキャンダルは、アメリカやイスラエルにいるイスラエル第一主義者にとってとても喜ばしいことに、イスラエル叩きに関する限りでは、大統領を後退に追い込んだのだ。
1月27日、ワシントン・ポストは再び秘密を暴露して、こう伝えた。
「先週、クリントンは、さらに軍事撤退するようイスラエルに強要できなかったと言明した。今週は“スキャンダルの結果として”クリントンは無能力である。というのは、共和党員は言うまでもなく、彼自身の党員でさえも、イスラエルにもっと圧力をかけるという政策を支持しないからである。」
クリントンのスキャンダルが明らかになるのを見守っている人々は、「なぜメディアは、不成功ではあるが公正さを装いながら、多くの場合急いで判決を下そうとするのだろうか」と、不思議に思うに違いない。
それは、あたかもどこかに“クリントンをゲットしろ”という大きなボタンがあって、誰かがそれを叩いたようなものなのだ。
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