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▼ ロシアがインドの核計画を推進

●インド・ロシア間に核技術契約が成立

 インドが最近核実験を行ったことに対し、アメリカはインドへの核技術供与を停止する圧力を各国にかけている。

 しかし、インドにとっては安心すべきことだが、1998年6月23日、インドを訪問したロシア・エネルギー大臣エフゲニー・アダモフは、25億ドルの契約に署名した。それは、インドのタミルナドゥ州クーダンクランに二基の軽水炉(それぞれ1000メガワット)を建設する契約である。

 今回の契約は何十年にわたる交渉の結果、ようやく合意にこぎつけたものである。今回の合意はインド・ロシアの特別な友好関係を強調しただけではない。ほぼ30年間、西側はインドに核技術供与を停止してきたが、今回、ロシアはそれを破ったのである。西側はインドが1974年に最初の核実験を行って以来、核技術の平和利用という理由でインドへの技術供与を停止してきたのである。


 今回の契約は政治的意味を持っている。アメリカ国務省首席報道官であるジェームズ・ルービンは6月22日に声明を出し、「ロシア政府は不適切な時期に不適切な契約を結んだ」と述べた。

 ルービンは、今回の契約を「常任理事国五か国とG8が共同で行ってきた努力を無に帰すもの」と表した。その努力とは「核実験は何の利益ももたらさないとインドに理解させる努力」である。

 興味深いことに、イギリス政府も6月25日、アメリカ政府と同じ声明を出し、ロシア政府に契約を考え直すよう迫る方針を明らかにした。


●インド原子力計画の推進

 ロシア原子力省第一次官ビクトル・ミハイロフは、次のように述べた。

「インドに原子力発電所を建設しても、ロシアは国際協定に何ら違反するわけではありません。なぜなら、これは全く原子力エネルギーの平和利用協定だからです。
 西側では今回の契約に不服の声も上がっているようです。しかし、ロシアはこれほど良い市場を手放すつもりはありません。この市場は資金だけでなく、専門家への仕事も提供してくれるのです。」

 クーダンクラン原子力計画は、インドの原子力計画を推進すると予想されている。インドの原子力計画は過去15年間、スローダウンしていた。インドはこれまで国内技術によって235メガワットのカンドゥ型重水炉を生産してきたが、現在、同じ型の500メガワットの生産に取り組んでいる。そして、フランス型のナトリウム冷却高速増殖炉の開発にも取り組んでいる。

 インドが外国から最後に原子力技術を輸入したのは1969年であり、このとき、アメリカのゼネラル・エレクトリック社が二基の沸騰水炉(それぞれ160メガワット)をマハーラーシュトラ州トロンバイに設置したのである。

 クーダンクラン計画は、インド南部、電力不足に悩むタミルナドゥ州に6年半後に完成する予定である。これは、国際原子力エネルギー局の安全監視の下で行われる。この計画は25億ドルの計画であり、現金でロシアに支払われる予定である。


●核融合研究

 今回の契約に関してもう一つ重要な事項がある。それは、ロシア・エネルギー大臣アダモフが「ババ原子力研究センター」(BARC:インド原子力研究のトップ研究所)を訪問したことである。

 この研究所で、アダモフは「インド原子力エネルギー委員会」の委員長R・チダンバラムと「アジア熱原子力研究基金」(ATRF)を設立する計画を話し合った。インド原子力エネルギー省は、この計画について大きな関心を示している。

 伝えられているところでは、この基金設立の目的は、アジア諸国の知的・産業資源を結集し、熱核融合とプラズマ物理学の分野で研究を進めることである。


 現在、アジア諸国は人的資源を使って核分裂研究を行っている。しかし、ヨーロッパでは様々な国が資金を出して「ヨーロッパ合同トルス核融合研究計画」を進めているのに対し、アジアでは合同計画は一つも存在しない。

 ATRF(原子力研究基金)計画は、現在急に出て来たものではない。1996年2月、ロシア政府はインド・中国・イランの原子力研究所、原子力企業の代表を招いて最初の国際会議を開催した。それはATRFを開催するためであり、この会議には上記三か国だけでなく、パキスタン・韓国・カザフスタン・ウズベキスタンも参加した。


 BARC(ババ原子力研究センター)で、アダモフとチダンバラムは、原子力工学のための近代的な技術・産業研究所を設立する計画について話し合った。こうした研究所は、高エネルギーのプラズマ研究には不可欠である。

 情報筋によれば、アダモフ、チダンバラムは「国際熱原子力研究センター」を設立することで一致している。そして、このセンターには「アジア熱原子力実験室」が設置される予定である。


 インドは「アーメダバード物理研究所」で中規模の研究計画を進めている。この研究所では、小さな融合反応実験装置(トカマク)で、高エネルギーのプラズマ実験が行われている。また「インドール先端技術センター」では、かなり高精度のレーザー技術が開発されている。

 しかし、インドが今回の合同計画を実行するためには、さらに多くの科学者・技術者が必要であり、そうした人々は多くの研究訓練を積んでいなければならない。

 ATRFの目的は、国内研究計画の推進、国際情報の収集、レベルの高い人材を技術・研究分野で養成すること、そして、プラズマ物理学、コントロール熱核融合に関する国際会議、セミナーを開催することである。


●インド・ロシア協力関係の先駆け

 インド・ロシア関係という点で今回の契約を見るならば、第一の意義は、今回の契約が今後10年間のインド・ロシア協力関係の先駆けとなる点である。

 ソ連崩壊まで、インドはソ連と軍事・科学面で密接な協力関係を持っていた。しかし、ソ連崩壊直後から、ロシアのインドへの態度は一変し、モスクワからは様々な釈明の言葉が出された。ソ連領土の変化、ロシアと米中との関係改善、軍事同盟国としてのロシアの地位低下、これらが取り沙汰された。さらに、ロシア外務大臣アンドレイ・コズイレフは、アメリカ、西ヨーロッパの利益と合致する形でロシアの外交を推進した。


 ぎくしゃくしたインド・ロシア関係が最も混乱したのは、1993年7月、ロシアがアメリカの圧力により、インドとの30億5000万ルピーの契約を凍結した時である。

 この契約はロシア宇宙局(グラフコスモス)がインド宇宙研究機関(ISRO)に超低温ロケット・エンジン、それに付随する技術を供与する契約であった。この契約は1991年1月に結ばれたが、アメリカ政府はこれを「ミサイル技術管理協定」に違反すると主張したのである。

 この協定は、500キログラム以上の弾頭を300キロメートル以上にわたって飛ばすことのできるミサイル技術の供与を制限する協定である。

 ISRO計画では、超低温ロケットエンジンは「極衛生打ち上げロケット」の二つの段階ロケットに設置される予定であった。このエンジンを使えば積載量が増加し、地上約3万6000キロメートルの軌道に多目的衛生を打ち上げることができる予定だった。


 インド・ロシア関係が以前のように友好的となったのは、1996年、外務大臣エフゲニー・プリマコフがインドを訪問してからであった。

 ロシアが西側の意向を伺っていた間も、インド政府はロシアとの関係改善を模索しており、その努力が昨年実を結んだ。インド・ロシアはクーダンクラン原子力発電所の契約を再検討し始め、他の経済協定についても議論を開始したのである。この経済協定には自由貿易、優遇貿易地域の設定、コモンウェルスの他の諸国の参加が盛り込まれた。


●深まるインド・ロシアの軍事協力関係

 これ以降、インド・ロシアの軍事協力関係は大きく改善された。

 インドは既に8機のSU-30ジェット機をロシアから購入しており、さらにロシア政府は10機のSU-30を西側航空基準でインドに供与することに合意している。

 その他、インドは昨年、ロシアから九型クラス潜水艦をソ連から購入し、今年さらにもう1艦を購入予定である。伝えられているところでは、ロシアは「インド防衛研究開発機関」と協力して、原子力潜水艦の開発に力を入れている。この潜水艦はサガリカ・クルーズ・ミサイルの発射台になり得る潜水艦である。


 インド・ロシアの軍事科学者は共同で、大陸間弾道ミサイルの防御システムの開発にも携わっている。

 この分野におけるロシアの専門技術は、インドにとって重要である。なぜなら、ロシアは S-300-PMU-1 と呼ばれる大陸間弾道ミサイルへの防御システムを開発しているからである。このシステムは、アメリカが開発したパトリオット・システムよりも明らかに優れていると言われている。

 インド・ロシアの軍事・技術計画は1994年に結ばれ、2010年まで継続する予定である。この計画は160億ドルと言われている。


 インドへの技術供与の禁止が打ち出されたことにより、アメリカのロッキード・マーチン社は、インド航空開発局との間に結んだ「軽戦闘航空機(LCA)」のシステム開発合意を中止した。噂によれば、GE404エンジンの供与も今後は停止されると言われている。

 インド国防大臣ジョージ・フェルナンデスは最近、インド議会で「バンガロールのガス・タービン研究所は、国内技術でカベリ・エンジンを開発した」と述べた。これらのエンジンはテストのために、まもなくロシアに送られるとのことである。しかし、LCAの最初の航空エンジンは、既にテスト済みのGE404となる予定である。


 あらゆる点を考慮しても、インド・ロシアの協力関係は、今後増大する見込みである。

 インド国防次官アジト・クマールはロシアへの訪問を終え、それを「極めて実り多い訪問」と述べた。この訪問中、彼はモスクワでロシア国防大臣イーゴリ・セルゲーエフ将軍の歓待を受けた。この訪問により、今後10年間のインド・ロシア軍事協力計画が確認された。

 この計画は、軍事技術協力の分野で定期的に合同作業が行われているうちに出て来た計画である。この計画の署名はボリス・エリツィン大統領が今年12月、インドを訪問した際に行われる予定である。


 今回の軍事協力計画の最大の注目点は、大陸間弾道ミサイルの防御システム開発についてである。同時に、インドが国内技術で開発したシステム、そして、オサ、ストレラ10、シカといったロシアの航空防衛システムも重要である。

 今回の会議に参加したロシア高官は、報道機関に次のように語った。

「軍事協力計画は継続されるだけではない。それはより深められ、より広範囲になる。」


 インド国防大臣の訪問内容は、ほとんど公にされておらず、明らかにインド・ロシア双方が、その詳細を秘密にするつもりである。

 当初、インド国防次官クマールとロシア国防第一次官ニコライ・ミハイロフとの共同記者会見が行われる予定だったが、これは最後の瞬間になって中止された。ロシア国防省は「記者会見中止はインド側の要請によるものだった」と述べた。

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