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▼コンラッド・ブラックが“BAC同盟”復活を要求


●イギリス・アメリカ・カナダ(BAC)同盟

 その人物はメディア帝国を支配しており、イギリスから、アメリカ大統領への攻撃を加えている。その攻撃はクリントン大統領が就任以来続いている。
 その人物はまた、ウィンストン・チャーチルが第二次世界大戦時に唱えた「同盟」、つまり、イギリス・アメリカ・カナダの同盟を復活させようとしている。
 これは矛盾するように見え、信憑性もないように見える。しかし、そう見えようとも、これは真実である。

 チャーチル時代と同じく、イギリス・アメリカ・カナダ(BAC)同盟が現在、再び持ち出されてきた。この同盟は、アメリカの反植民地政策と敵対し、フランクリン・ルーズベルト大統領の政策とも両立しない。
 現在、クリントン大統領、元商務長官・故ロン・ブラウン、財務長官ロバート・ルービン、そしてクリントン政権の他の人々は、フランクリン・ルーズベルトの政策に立ち返ろうとしている。
 それゆえ、この政権はBAC支持者から容赦ない攻撃を受ける。こうした攻撃を行っている代表人物は、下院議員議長ニュート・ギングリッチ(共和党:カリフォルニア州選出)、あるいは独立検察官ケネス・スターである。

 先の人物に戻ろう。その人物とはコンラッド・ブラック、ホーリンガー社代表取締役である。
 彼は98年7月6日、ロンドンの「政治研究センター」定例会議で演説を行った。このセンターは、過激に自由市場を主張するモン・ペルラン協会の代表シンクタンクである。
 彼の演題は「イギリスの最終選択:ヨーロッパを取るか、アメリカを取るか?」であった。この中でブラックは、次のように述べている。

「ヨーロッパ連合は、私たちの国民生活で最も集団的、非自由主義的、そして規制主義的です。
 イギリスはいかなることがあっても、ヨーロッパ通貨連合に加わるべきではありません。そうではなく、大西洋の両側を含む協定、つまり『北米自由貿易協定』(NAFTA)を拡大させ、『スーパーNAFTA』を作るべきです。
 イギリス以外のヨーロッパ諸国は、アメリカ・カナダとの間に特別な親縁関係を持っていません。大陸ヨーロッパ諸国は、イギリスが近代以来、北米との間に持っている劇的な歴史関係を有していません。
 NAFTAを拡大すれば、EUにも商業利益が出るでしょう。スーパーNAFTAは伝統的な英米思想、つまり税制を緩和し、社会支出を抑え、自由市場を作り出すという思想に基づいています。これによって、アメリカは何ら主権を失うことはなく、他の諸国にもその心配はありません。」


●BAC第二世代

 コンラッド・ブラックがBAC同盟のスポークスマンとして登場してきたことは、大きな意味を持っている。
 ブラック率いるホーリンガー社は、英語圏で最大のメディア・カルテルの一つである。同社は、ロンドンではテレグラフ社を運営し、保守党サッチャー路線、そしてクラブ・オブ・アイルズのフィリップ殿下のプロパガンダ機関となっている。
 イスラエルでは「エルサレム・ポスト」を運営し、リクード党のベンヤミン・ネタニヤフ首相がクリントン政権の中東和平交渉を妨害する際、大きな役割を果たしている。
 最近では、ホーリンガー社は、シカゴ・サン・タイムズ紙を買収し、アメリカでの影響力を拡大した。カナダ・オーストラリアへの進出も目ざましい。

 ホーリンガー社の母体は、チャーチルが戦時に設立した秘密機関、「戦時物資供給社」である。
 戦時物資供給社はアメリカでの特別活動を行うイギリス機関であった。この機関はアメリカの軍事援助、そして金融支援が確実にイギリスに届くようにイギリス軍備省の指令の下で設立された。
 この機関のトップに就いたのはカナダ人、エドワード・プランケット・テイラー、そしてジョージ・モンタギュー・ブラック(コンラッドの父)であった。ニューヨーク・タイムズ紙はこの二人について、「アメリカ・カナダの経済を事実上、合一させる重要な役割を果たした」と描写している。

 戦時物資供給社は商業に深く関わり、13億ドルの利潤を上げるまでに成長した(当時としては莫大な額である)。戦後、この会社は民営化され、アルグス社という名のクローズド・エンド型投資会社に変貌した。
 テイラーとジョージ・ブラックの指導の下、アルグス社はメディアに進出し、彼らの退職後、コンラッド・ブラックがこの会社を引き継いだ。
 1980年代、コンラッド・ブラックは社名をホーリンガー社と変え、本社をトロントからロンドンへと移し、メディア買収工作を加速させた。

 コンラッド・ブラックは、彼の父、そしてE・P・テイラーが保持していたイギリス諜報機関とのつながりを壊さなかった。
 ブラック家からの情報では、ホーリンガー社の取締役には長年、アーサー・ロスが君臨していた。ロスはニューヨークの銀行家だったが、長年、ビーバーブルック卿の下、イギリス諜報機関のトップとして働いた人物でもあった。
 ブラックはまた、故ルイス・モーティマー・ブルームフィールドとも親しい間柄にあった。ブルームフィールドは戦時、J・エドガー・フーバーが長官を務めていたFBIとつながりを持ち、戦後はモントリオールに本社を置くパーミンデクス社、つまりイギリス諜報機関が設立した会社の社長となった。
 パーミンデクス社はジョン・F・ケネディ大統領の暗殺、そしてフランス大統領シャルル・ド・ゴールの暗殺未遂に深く関わった会社と見なされている。

 今日、ホーリンガー社は、元イギリス首相マーガレット・サッチャーが長を務める国際顧問という役職を置いている。この役職に就いているのは、サッチャーの二人の部下、自称イギリス要員ヘンリー・キッシンジャー、そしてピーター・キャリントン卿である。
 他にも、クラブ・オブ・アイルズの上流階級が同社の顧問、取締役として名を連ねている。列挙してみよう。エブリン・ド・ロスチャイルド卿(N・M・ロスチャイルド社社長)、ヘンリー・ケスウィック(ジャーディン・マテソン社社長)、ワートナビー卿(イギリス航空社長)、R・ドナルド・フュラートン(カナダ帝国銀行頭取)である。


●白熱する議論

 政治研究センターでのブラックの演説は、イギリス政治の中ですぐさま熱っぽい議論を呼び起こした。
 98年7月17日、サッチャー政権の国防大臣マイケル・ヘーゼルタインは、ブラックへの痛烈な批判を行った。この批判は、ホーリンガー社所有のデイリー・テレグラフ紙に掲載された。
 ヘーゼルタインは、ヨーロッパ通貨連合、政治統合についての自説を述べた後、サッチャーこそマーストリヒト条約、ヨーロッパ統合の開拓者の一人であると付け加えた。
 お決まりのグローバリゼーション称賛を述べた後、彼はこう結論づけた。 「恐らくブラック氏は、カナダ人に自分たちの祖先について再考させ、カナダをヨーロッパ連合に参加させようとしたのだろう。この考え方が非合理であるのは、イギリスがアメリカの政策を決定すべきだという主張が非合理であるのと同じことである。」

 この記事が掲載された翌日、ブラックは反論を行った。
 記事のタイトルは「ヨーロッパの議論:最終決断」である。ブラックは言う。

「ヘーゼルタイン氏は保守路線を主張し、サッチャー元首相の味方になっているつもりである。しかし、彼こそ、サッチャー元首相の残酷な敵、それが言い過ぎであれば潜んだ敵である。
 ヘーゼルタイン氏は、政治研究センターでの私の演説を批判している。しかし、サッチャー元首相は公的に私の演説への支持を表明している。
 スーパーNAFTAについては、北米の人々も賛意を示している。ヘーゼルタイン氏はイギリスはNAFTA加盟を許されないだろうと論じている。
 しかし、そうではない。アメリカ下院議長、あるいはカナダ野党のリーダーは最近、デイリー・テレグラフ紙にイギリスのNAFTA加盟を歓迎する記事を掲載している。
 ヘーゼルタイン氏は、私がカナダへ戻り、カナダ人にEU参加を呼びかけるようにアドバイスしている。しかし、私がカナダ出身であることは、この議論とは関係がない。」

 サッチャー、そしてギングリッチがスーパーNAFTA計画に賛意を表明したというブラックの主張は正確である。
 98年4月、下院議長ギングリッチはロンドンを訪問し、いくつかの演説を行った。彼はサッチャー基金の招きにも応じ、そこでイギリスがNAFTAに参加すべきとの演説を行った。
 4月20日、彼はデイリー・テレグラフ紙に「ヨーロッパの大きな賭け」という記事を掲載し、自説をさらに推し進めた。
「ヨーロッパ大陸諸国は規制経済を行い、その欠陥は明らかです。それは労働者への『補助金』を考えても分かることです。
 ヨーロッパ通貨連合は、かなりリスクの高い計画であり、失敗する恐れもあります。それゆえ、イギリスがこの通貨連合、政治統合になかなか踏み込めないでいるのも無理からぬことです。
 アメリカ議会、そしてカナダ議会の中には、イギリスにNAFTA加盟を進める動きがあり、私はこれを支持します。イギリスは大西洋の向こう側にもパートナーがいることを知るべきです。」

 サッチャーも7月下旬、今年中にアメリカを訪問する予定を明らかにした。それは、彼女の「良き友人」マルコム・スティーブ・フォーブスの選挙キャンペーンを応援するためである。
 フォーブスは2000年の大統領選挙に共和党から立候補予定である。サッチャー訪問は、さながらアメリカ独立を妨げようとやってきた英国兵と同じである。


●本当の戦いが始まる?

 ブラックとヘーゼルタインのやり取りから見えてくることは、ヨーロッパ通貨連合について、イギリス・エリート内部で不一致があるということである。
 彼らは世界の金融システムが崩壊に向かいつつあることに実は気づいており、それが問題の核心となっている。ブラック、保守党タカ派、フィリップ殿下、そして、クラブ・オブ・アイルズの原料カルテルは、世界の原料物資を強奪し、危機を到来させようとしている。
 こうした人々は、アメリカでの勢力拡大を目指しており、それは危機到来時、アメリカが彼らの野望を妨害しないようにするためである。

 一方、イギリス首相トニー・ブレアは、ユーロに備えて内閣人事をまとめた。
 この人事は98年7月28日に発表され、ジョイス・クインが外務省ヨーロッパ局長に任命された。クインはユーロ支持者であり、熱烈に単一通貨を提唱している。
 ブレアの選挙キャンペーンを取り仕切っているピーター・マンデルソンは、王立国際問題研究所(RIIA)の有力ポストを占めているが、彼も今回、貿易産業大臣に任命された。イギリス最大のスーパーマーケットの元社長、サンスベリー卿も貿易産業省入りした。マンデルソン、サンスベリー卿は二人とも、単一通貨の支持者である。
 いくつかの情報筋からは、チャールズ王子もイギリスのユーロ加盟に賛意を表明している。
 ブレアはヨーロッパの社会主義者を支配下に収めながら、ユーロ加盟の準備を行っている。
 もしイギリス王室がブレアの意図を妨害するなら、彼はウィンザー家に反旗を翻すかもしれない。そうなれば血まみれの闘争が起こるだろう。
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