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▼ 三極委員会:1999年ワシントン年次総会

●三極委員会は“絶滅種”となりつつあるか?


 1999年3月13日から15日にかけて、ワシントンDCで、三極委員会の今年の年次総会が行われた。
 冷戦の機関である三極委員会は、絶滅しそうな“種”のリストにすでに入っている。今回の年次総会の最後には、三極委員会が絶滅に向かっているという顕著な兆候が見られた。
 毎年、年次総会の閉会の際には、会議で得られた“コンセンサス”について、三極委員会の議長が新聞発表を行ってきたが、今年はそれが行われなかった。このようなことは今回が初めてであった。
 また、報道関係者が政策が決定されたかどうかについて質問をした時には、議長は誰も答えなかった。
 三極委員会は、デイヴィッド・ロックフェラーが、北アメリカ・ヨーロッパ・日本から代表者を集めて、世界の金融少数独裁者のために政策を作る超国家的機関として設立した団体である。執行委員会のメンバーには、ヘンリー・キッシンジャー、ズビグニュー・ブレジンスキー、ローレンス・イーグルバーガー、イギリスのキャリントン卿などが入っている。

 今年の報道陣は、最後の全体セッションの終わりに招かれた。それは、マスコミとの質疑応答の時間が取れないようにするためであった。
 しかし、北アメリカ議長ポール・A・ボルカー、ヨーロッパ議長オットー・グラフ・ランブスドルフ、日本議長小林陽太郎の3人の議長は、最終セッションでかなりの論争が行われたことを説明した。

 オットー・グラフ・ランブスドルフ(ドイツ自由民主党名誉議長)は、「最終セッションでは、答えよりも疑問の方が多かった」と言った。

 小林陽太郎(富士ゼロックス会長兼最高経営責任者、ゼロックス社理事会役員、ABBアセア・ブラウン・ボベリ社理事会役員)は、「日本経済は、質的にも量的にも改善が必要である」とうっかり言ってしまった。
 しかし、「来年に日本で行われる年次総会の主な文書を準備している東アジア特別グループは、順調なスタートを切った」と述べた。そして最後には、「来年の総会では、21世紀に向けて、もっと長いスパンの戦略を発展させることができるだろう」と言った。

 ポール・A・ボルカー(カーター政権時代のFRB議長、その後ウォルフェンソン投資会社会長、現在プリンストン大学名誉教授)は、「この総会では、アメリカ政府について皮肉な言辞が多かった」と言った。
 ボルカーは、あるアメリカの発言者の名前を挙げ、「彼らは『アメリカは、アメリカが果たすべき責任を果たせるのか』という疑問を投げかけた。彼らは、『国際問題に対処できるようなアメリカ政府当局者、議員は存在する』と表明したかったのではないかと信じている」と言った。

 総会で討論された内容についての主な報告書のタイトルは、「21世紀の三極委員会の戦略――協力か対立か」であった。これは、三極委員会の中で緊張が高まっていることを表していた。
 三極委員会の伝統に従って、3地域から1人ずつ選ばれた3名の代表者が討議草案レポートを執筆した。しかし、今年のレポート担当者は、執筆するにあたって、お互いに話し合いをすることすら行っていなかったようであった。
 まして、3地域が21世紀に協力して取るべきである首尾一貫した戦略を提出しようという努力は見られなかった。

 他にも同じような現象が見られたが、このことは、レポートにおいても、会議の進行においても、“協力”よりも“対立”の方が多かったということを表しているのではないだろうか。

 この3人の執筆者は、3月15日の最終セッションで、全体に向かって締めくくりの言葉を述べた。この3名とは、以下のとおりである。

 ロバート・B・ゼーリック:現在、ワシントンDCのジョージタウン大学戦略国際問題研究所所長・最高経営責任者。ブッシュ政権時代の国務省経済担当次官。ホワイトハウス副主席補佐官になる前に、国務省の相談役を務めていた。

 小和田恒:1994年から98年に日本国連大使。現在、日本国際問題研究所所長。

 ピーター・サザランド:現在、ゴールドマン・サックス・インターナショナル会長兼専務理事、ロンドンのブリティッシュペトロリアム・アモコ副会長。

 三極委員会の中で、明らかに関心を持たれていることが一つある。それは、小和田恒が述べたように、「アメリカは、グローバルなユニラテラリズム(一方的政策の提唱)を展開している」ということである。
 また、ピーター・サザランドも、サー・ヘンリー・キッシンジャーが、「アメリカが単独の帝国勢力として孤立するのは、アメリカにとって健全なことではない」と最近発言したと述べていた(キッシンジャーは、イギリスの手先を自認する人物である)。

 他に、三極委員会内での対立が見られたのは、以下のような点である。

1.NATOを拡張するべきか、それともアメリカの支配のもとで存在し続けるべきか。
 (1)ヨーロッパ人は、地域外のアメリカに展開配備しなければならないことに対して、敵意を感じている。
 (2)あるイギリス・アメリカ閥が、NATOを拡大するように圧力をかけている。
 (3)ヨーロッパ人は、ヨーロッパ独自の安全保障システムを持ちたいと思っている。

2.“ロシア・中国・インドのサバイバーズ・クラブ”と読んでいるものに対して、どうアプローチしたらよいか。サバイバーズ・クラブとは、ベルリンの壁が崩壊し、グローバル化した経済が崩壊したのと同時に出現したものである(※ゼーリックの封じ込め政策についての資料参照)。

3.アメリカがブッシュ政権時代に奨励していた“ユーロランド”は、実際にそんなに大したアイデアだったのか。
 (1)ユーロは1999年1月に導入されたが、ユーロの価値は導入以来下がり続けている。
 (2)社会民主主義諸政府は、仕事を増やし、社会的セーフティネットを作ることによって赤字支出を解決したいと思っている。
 (3)この年次総会の前日に、欧州委員会委員長ジャック・サンテールと、理事19名が辞任した。これによって“中央官僚制”が崩壊したが、「ヨーロッパ諸国は“中央官僚制”の重すぎる主権を放棄したのか?」という疑問が今もなお盛んである。

4.小和田恒が述べたように、対立のもう一つの原因は、日本で経済崩壊が10年も続いているということである。小和田は(現実的な解決策は示さずに)、「10年先には回復するだろう」と楽観的に言った。

 総会の最終日には、三極委員会の重要人物数名が欠席した。それは、共通の戦略についての幅広い不満が続出していたことが原因だったと思われる。
 欠席者の中には、ホーリンガー社のコンラッド・ブラック、元三極委員会理事でカーター政権の国家安全保障顧問であったズビグニュー・ブレジンスキー、三極委員会の創設者兼名誉議長デイヴィッド・ロックフェラーなどがいた。
 また、議長団は閉会の際に新聞発表の声明を出さなかったし、報道陣の質問にも立ち向かえなかった。
 このようなとんでもない大失敗は、この年次総会において“対立”が見られた上記の分野で、合意が得られなかったということを示している。


暗黙の了解の疑問

 討論の中で最も欠けていたのは、「組織的でグローバルな経済崩壊を解決するためには、どのような対応を取るべきか」ということについて、実質的な意見の発表がなかったということだと思われる。これは、草稿レポートと参加者の発言からの判断である。
 ニューブレトンウッズ体制についての明確な議論は全く行われなかったし、世界的なインフラストラクチャー計画についても、何の討論も行われなかった。
 ある人々が、希薄な“ニューアーキテクチャー(新たな構築)”について語るために呼ばれていたが、そのような三極委員もどきの人たちは、この組織的な経済崩壊に対しては、部分的な責任しか持っていない個人や団体であった。

 この問題について、“遠くから”扱っていたパネラーの顔ぶれは、以下のとおりである。

1.13日、財務副長官ローレンス・サマーズが、「三極諸国とグローバル経済」というテーマで演説した。

2.13日、「荒れるグローバル経済における三極諸国の経済」というテーマで、全体セッションが行われた。セッションでの演説者は以下のとおりである。
 AFL-CIO(アメリカ労働総同盟・産別会議)議長ジョン・スウィーニー。演題は「労働者の諸問題」。
 小林陽太郎「日本経済を復興させる」。
 元フランス経済・大蔵相エドモンド・アルファンデリー。アルファンデリーは、「経済改革の触媒としてのユーロ」という、非現実的な演説を行った。アルファンデリーは、「すでに崩壊しつつあるユーロが、ドルの競争相手の準備通貨となり、ユーロが触媒となって、EUはアメリカの超強力なパートナーになるだろう」という説を主張した。

3.14日、「ブラジルとアルゼンチン」というテーマで、全体セッションが行われた。昨年、ジョージ・ソロスなどの投機家が、巨額の投機攻撃をかけたことによって、アジアのタイガー諸国が没落したが、ブラジルとアルゼンチンも崩壊の一途をたどっている。
 セッションでは、元ブラジル大統領特別顧問アンドレ・ララ・レゼンデ、アルゼンチン元経済財政相ドミンゴ・カバロが演説した。
 イベロアメリカでは、20年近くに渡って経済の荒廃が続いているが、それに対して明確な解決策を出したのは、IMFだけであった。IMFの解決策とは、緊縮財政と予算の削減、実物経済の解体である。

4.14日、アンドレイ・ココーシン(ロシア科学アカデミー副所長、元第一国防相・ロシア連邦安全保障会議書記)が演説した。内容は不明。
 (ココーシンは、ボリス・エリツィンが解任した新自由主義、自由市場改革論者の仲間であった。昨年の8月、ロシアがGKO債の債務不履行に陥った時に、エリツィンは彼らを解任して、エフゲニー・プリマコフを首相に就任させた。その後、プリマコフは“国家経済戦略”を実行している。中国とインドを含めた“サバイバーズ・クラブ”に参加することもその一つである。)

5.15日の午前中に、国際金融界のハイエナたちが登場した。
 フィリップ殿下のジェノサイドの相棒である世界銀行総裁サー・ジェームズ・ウォルフェンソンは、「広範囲な社会・経済的チャレンジ」というテーマで演説を行った。
 財務長官ロバート・ルービンは、謎めいた曖昧な言い方で、「新たな財政構築」を呼びかけた。
 IMFの第一専務理事スタンレー・フィッシャーは、「国際金融制度の構造の改善」について演説をした(しかし、ロシア、ブラジルをはじめとするアジアのタイガー諸国のほとんどが、ジョージ・ソロスなどのヘッジファンド経営者の犠牲になった時に、それらの国の経済荒廃を集結させるのは、IMFの責任だったはずである)。

 このような組織的な経済崩壊に対し、実物経済の解決を図るという基本的な分野において、三極委員もどきの人たちは、さらに他の国までも、ニューダークエイジ(新たな暗黒時代)に突き落とす準備が明らかにできている。その時には、IMFや世界銀行の“回復”政策では救うことができないような状況になるだろう。


“法の支配”というイチジクの葉

 合意が得られなかったにもかかわらず、三極委員(トライラット)たちが、もっと率直だったのは、軍事・安全保障政策の分野であった。
 ブッシュの相棒、ロバート・ゼーリックは、“アメリカ”という討議用文書において、都合の悪い物を隠す“イチジクの葉”を持ち出した。ゼーリックは、このように書いている。
「国際法の多くは、もともとアメリカの扇動によって作られたものである。しかし、最近の状況に対しては、実際的な対応を取っていることによって、ワシントンが生んだ“法の支配”を実行できない機会が非常に多くなっている。」

 ゼーリックは、中国・ロシア・インドを、ユーラシア大陸に封じ込めることを呼びかけていた。この3ヶ国がサバイバーズ・クラブの中で結合を強めていることに対して、ゼーリックが対処していることは明らかであった。
 ゼーリックは、アメリカの戦略には三つの目的があると言っていた。
 (1)アメリカは、海の向こうの二つの主なパートナー、西ヨーロッパと日本との絆を徹底的に見直す必要がある。それは、新たな課題が発生している状況に対して、より良い対策を取るためである。
 (2)北アメリカ・欧州連合・日本は、この“政治共同体”の中で、次のパートナーとなる可能性のあるグループに対して、アプローチをする必要がある。特に、中央・東ヨーロッパ、 イベロアメリカ、東アジアなどの国々で、解放市場を築いて中産階級を生み出し、代表制民主主義を発達させている国々との接触である。
 (3)アメリカをはじめとする三極委員会の加盟国は、財政・貿易・情報などのグローバル経済システムの中で、これらの地域を結合させる必要がある。

 ゼーリックは、「NATOはこれ以上拡大しない方がよい」と述べている。
 ゼーリックは、冷戦後の世界における非現実的な敵のビジョンを描いていた。それは、いわゆる“ならず者国家”が、生物兵器や科学兵器をはじめとする大量破壊兵器にますます手を出すようになっており、敵陣営がカタストロフィー的な戦争の賭けに走ることを可能にしている、ということであった。
 ゼーリックは、「統合された戦域・国家ミサイル防衛システム」を呼びかけていた。それは、すぐ手に入る時代遅れのシステムで、クリントン政権の“代表者会議”のメンバーである国防長官ウィリアム・コーエン、国務長官マデリン・オルブライト、統合参謀本部ヘンリー・H・シェルトン将軍などが提唱しているものだった。
 ゼーリックは、科学技術・費用・作戦上の任務を共有するミサイル防衛システムを構築する際に、ヨーロッパ人が参加することを要請した。

 ピーター・サザランドは、安全保障政策の分野において、「ヨーロッパは、西欧州連合防衛協定をNATOと統合するにはどのようにしたらよいか」という疑問を提出した(サザランドは、他の場所において「欧州連合を作り出した条約は、ますます多くの敵意が向けられるようになっている。欧州連合は、一夜のうちに崩壊してもおかしくないくらいである」と述べていた)。
 サザランドは、「その疑問に対する解決策は、EUのガイドラインのもとで、“共通外交安全保障政策(CFSP)のためのハイ・リプリゼンタティブ”を確立することである」と述べた。

 「このCFSPという新たな機関の枠組みは、6月に完成する。その時には、閣僚会議が、“CFSPのためのハイ・リプリゼンタティブ”の最初の任命を行い、兵站上の独立の支援を行うための早期警戒・立案部隊が作られる予定である。
 “ハイ・リプリゼンタティブは、現実的な影響力を行使することができるのか。単なる調整という役割以上のことができるのか”という疑問は今も出ているが、CFSPが実現した場合、少なくとも何らかの作戦上の優越性が得られることが期待できる(この陳述には、ヘンリー・キッシンジャーが、「ヨーロッパと話したい時は、誰に電話すればいいのか?」と言った、有名な質問に答える意図が含まれている)。間違いなく、これは国民が実際に望んでいると思われる役割である。
 しかし、最初の“CFSPのためのハイ・リプリゼンタティブ”は、やっかいな仕事となるだろう。彼らは、安全保障の問題を超えるコンセンサスに至るような問題を持ったグループと、政策を作る努力をしなければならないからである。」


非現実的な東アジアへの拡張

 三極委員会は、冷戦の機関として設立されたものであった。そして三極委員会は、ロシアと中国とのパートナーシップは追求してこなかった。むしろ、両国に対しては封じ込め政策を取っていた。
 このような状況を考えると、小和田恒が「三極委員会を拡張して、東アジアブロックを作る」という提案をレポートに書いているのは、注目に値すべきことである。
 小和田は、「三極主義に立ち戻る――責任分担の必要性」という小論の中で、このように書いている。
「世界は、国際間で同じ価値を共有し合う“パックス・コンソーティス(共同体の平和)”になっている。その価値とは、自由・民主主義・法の支配・人権の尊重である。」

 小和田はさらにこのように書いている。
「三極主義に関連した地域である東アジアについては、全く別の検討がなされなければならない。
 東アジアの多くの国が持っている関心は、三極委員会の加盟地域が持っている関心と、かなりの一致を示している。それは、自国の政府の民主主義的原則に基づいた政治構造、自由市場の原則に基づいた経済構造、法の支配に基づいた社会構造、人権の尊重という点である。
 ここ20年の間に、東アジア地域は完全にその“顔”をチェンジした。
 東アジアは、日本・大韓民国・フィリピン・タイ・マレーシア・シンガポール・インドネシア、そして台湾・香港などのパートナーと均質なグループを形成している。今我々は、このようなグループの登場を目の当たりにしているのである。
 これらの国はすべて、政治・経済・社会構造において、三極地域と同じ性格を多く有している。そして、三極主義が追求しようとしている価値と、本質的に同じ価値を有しているのである。……
 東アジアが、三極委員会の地域となり、三つ組みの三つのパートナーの一つとなることを、主張してはならないと言う理由はあり得ない。東アジアは、北アメリカ地域、西と東のヨーロッパ地域と等位だからである。
 すでにこのような方向の動きは起こっている。これは、大変喜ばしいことだと私は思う。」

 もちろんこの計画には、中国が抜けているという大変なミスがある。香港と台湾が含まれているというのに、世界で最も人口が多い中国が、三極委員会の拡張地域には入っていないのである。
 三極委員会が、2000年で日本で行われる年次総会に向けて、このような拡張を行おうという計画は、最近の委員会会議で話し合われたのではないかと思われる。中国以外のほとんど全部の国が、新たな東アジアグループを作り、会議を行ったのではないだろうか。
 三極委員会を拡張しようというこの提案には、「組織的な経済崩壊によって、このグループが2000年までに完全に絶滅するということはない」という予言がなされたのである。


●資料:ゼーリックは、ロシア・中国・インドを封じ込めようとしている

 ブッシュの相棒、ロバート・ゼーリック(ワシントンDCのジョージタウン大学戦略国際問題研究所所長・最高経営責任者)は、1999年3月13日から15日にかけて行われた三極委員会年次総会で使われる草稿レポート「21世紀の三極委員会の戦略――協力か対立か」を執筆した。
 ゼーリックは、アメリカの項目を担当した。ゼーリックは、三極諸国に対して、“サバイバーズ・クラブ”と手をつなぐことを呼びかけはしなかった(サバイバーズ・クラブとは、中国・ロシア・インドが統合されてできた連合である)。
 ゼーリックは明らかに、このサバイバーズ・クラブは、安全保障への潜在的な脅威であり、できるだけ早く封じ込めなければならないと考えているのである。

 以下の文章は、ゼーリックの小論からの抜粋である。

 アメリカは、ヨーロッパと日本との健全なパートナーシップを結んでいる。このパートナーシップは、トランス・アトランティック地域とアジア・パシフィク地域という、二つの地域の安全保障の確保に大いに役に立つであろう。
 これらの地域の不安定さは、アメリカへの脅威を増大させてきた。このパートナーシップは、三極諸国が、中国とロシアの未来の不確実さに対処する能力を高める役割も果たすだろう。……

 この民主主義共同体(三極委員会のこと)の周辺には、ユーラシアの三つの大きな難問が存在する。すなわち、中国・ロシア・インドである。
 3国とも、大規模なトランスフォームの最中にある。中国とロシアの両国は、世界の中で自国の占める位置を再定義しようとしているが、驚異的な国内騒動が起こっている。
 我々の目的は、この共同体の中に、中国とロシアを平和的に統合する道を提供することでなくてはならない。しかし同時に、もしそれが不可能ならば、両国に対して防衛する準備も整えていなければならない……。

 三極諸国は、依然として、ロシアやウクライナなどの元ソ連の国々とうまくやっていかなければならない。近い将来、このような国々が原因となって生じる安全保障問題は、彼らの強さによって生じるのではなく、弱さによって生じるのである。
 実際、ロシアで起こった政治・経済・社会的崩壊は、最も危険である。彼らは、大量破壊兵器を有している敵陣営の危険性を増大させているからである。……

 中国が強大になることは、アジアの他の諸国にとっては不安である。中国は、驚異的な国内問題にいまだに直面しているが、アジアにおける中国の影響力が上昇しつつあることは間違いがない。
 中国の指導者層の優先事項は、経済を発展させることであり、これはもっともな選択である。しかし、中国は、「アメリカが東アジアに存在していることは、東アジアの安全を保障している」という考え方を受け入れていない。これは問題である。
 このことは、中国は、「韓国と協力し、東南アジアに大きな影響力を持ち、日本を抑制し続ける」という未来の方が好きであるということを示しているように思われる。
 中国は、民主主義を強く望んでいる。台湾が望んでいるのか、中国本土の少数の活動家が望んでいるのかは別としても、やはり勇気づけるような材料にはならない。

 しかし、中国の指導者層は、安全保障の問題については実用主義を示してきた。少なくとも中国の発展の現段階では。
 もしアメリカ・日本・韓国が、東アジアの安全保障における現在の体制を貫くという決意を示すなら、中国はその現実を受け入れると私は信じる。……

 日本とアメリカは、もっとバランスの取れた安全保障と軍事協力を育てていくべきである。アメリカと日本の防衛ガイドラインは、いったんは発効はしたが、両国が軍事的な危機に対処できるようなものにした方がよい。
 しかしこれは、日本がより大きな役割を担うような戦略に向けての単なる出発点であるはずである。
 日本とアメリカは、両国の軍隊をもっと密接に提携させることを始めなければならない。そのためには、情報、主義原則、情報テクノロジーの使用、作戦の立案、訓練、合同演習を共同で行うことが必要である。
 このような軍事的統合は、外的衝撃(韓国か中国か、あるいは他の国の)によって、日本の安全保障の戦略の変更が余儀なくされるような事態を招く可能性は減少するだろう。……

 アメリカと日本の絆がもっと深まることによって、アメリカ・日本・韓国の同盟関係は発展するはずである。

 中国は、この同盟の発展をよく思わないだろう。中国は、アメリカと日本が台湾に干渉するのを恐れるだろう。中国は、アジアの安全保障協定を操れるような流動性を望んでいる。
 しかし、中国がそのようないたずらを始めるのを許しておくのは我々の利益にならないし、不利益なだけの話ではない。それよりも我々は、しっかりとした安全保障体制を協力して築き、中国が、経済や政治の面で、アジアや世界とよりいっそう協力できるような機会を作るべきである。……

 この共同体の安全は、現在でも大部分はアメリカにかかっている。しかし、今後10年から15年のうちには、NATOの一部として、ヨーロッパと補足し合うようなパートナーとなることができるだろう。そして、日本・韓国・オーストラリア、そしておそらく他の国も含めた太平洋のパートナー諸国をサポートすることができるだろう。
 次のステップは、トランス・アトランティックとトランス・パシフィックの安全保障パートナー諸国を集めることである。そして、中国・ロシア・インドと、安全保障上の協力を真剣に行う機会を提供することである。

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